JavaScript/SharedArrayBuffer

SharedArrayBuffer オブジェクトは、固定長のバイナリデータバッファを表し、複数のエージェント（スレッドやワーカー）間で共有することができます。これにより、並列処理環境でのデータ共有が可能になります。

構文

newSharedArrayBuffer(length)

• length: 作成するバッファのバイト単位の長さ。

プロパティ

• SharedArrayBuffer.prototype: SharedArrayBuffer オブジェクトのプロトタイプを表します。
• SharedArrayBuffer.prototype.byteLength: バッファのバイト単位のサイズを返します（読み取り専用）。
• SharedArrayBuffer.prototype.growable: バッファがサイズ変更可能かどうかを示すブール値を返します（読み取り専用）。
• SharedArrayBuffer.prototype.maxByteLength: バッファの最大バイト長を返します（読み取り専用）。

メソッド

• SharedArrayBuffer.prototype.slice(start, end): 指定した範囲の新しい SharedArrayBuffer を作成します。
• SharedArrayBuffer.prototype.grow(newLength): 成長可能なバッファのサイズを新しい長さに変更します。

例

基本的な使用方法

以下のプログラムは、SharedArrayBuffer の基本的な使用方法を示しています。

// 1024バイトの共有バッファを作成constbuffer=newSharedArrayBuffer(1024);console.log(buffer.byteLength);// 1024// Int32Arrayビューを作成constint32View=newInt32Array(buffer);int32View[0]=42;console.log(int32View[0]);// 42

このプログラムでは、1024バイトの SharedArrayBuffer を作成し、そのバッファに対して Int32Array ビューを作成しています。このビューを通じてバッファの内容を操作しています。

ワーカー間でのデータ共有

以下のプログラムは、メインスレッドとワーカー間で SharedArrayBuffer を使用してデータを共有する例を示しています。

// メインスレッドconstbuffer=newSharedArrayBuffer(4);constview=newInt32Array(buffer);view[0]=123;constworker=newWorker('worker.js');worker.postMessage({buffer});worker.onmessage=function(event){console.log(`ワーカーが値を ${view[0]} に更新しました`);};// worker.js の内容self.onmessage=function(event){const{buffer}=event.data;constview=newInt32Array(buffer);console.log(`受け取った値: ${view[0]}`);// 値を更新view[0]=456;self.postMessage({done:true});};

このプログラムでは、メインスレッドが SharedArrayBuffer を作成し、ワーカーに送信しています。ワーカーはバッファの内容を読み取り、更新します。この変更はメインスレッドからも見えます。

成長可能なSharedArrayBufferの使用

以下のプログラムは、サイズ変更可能な SharedArrayBuffer を作成して使用する例を示しています。

// 初期サイズ8バイト、最大サイズ16バイトの成長可能なバッファを作成constbuffer=newSharedArrayBuffer(8,{maxByteLength:16});console.log(buffer.byteLength);// 8console.log(buffer.growable);// trueconsole.log(buffer.maxByteLength);// 16// バッファサイズを12バイトに拡張buffer.grow(12);console.log(buffer.byteLength);// 12// Int8Array ビューを作成constview=newInt8Array(buffer);for(leti=0;i<view.length;i++){view[i]=i;}// バッファの内容を表示console.log([...view]);// [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11]

このプログラムでは、初期サイズ8バイト、最大16バイトの成長可能な SharedArrayBuffer を作成しています。grow() メソッドを使用してバッファサイズを12バイトに拡張し、Int8Array ビューを通じてバッファの内容を操作しています。

注意点

• セキュリティ制限: セキュリティ上の理由から、SharedArrayBuffer はクロスオリジン分離された環境でのみ利用可能です。これには、Cross-Origin-Opener-Policy: same-origin および Cross-Origin-Embedder-Policy: require-corp HTTPヘッダーが必要です。
• データ競合: 複数のスレッドが同時に同じデータにアクセスする場合、データ競合が発生する可能性があります。これを防ぐために、Atomics オブジェクトを使用して同期操作を行うことが推奨されます。
• 非同期通信: SharedArrayBuffer は、postMessage() 呼び出しによってコピーされるのではなく、参照として転送されます。

外部リンク

• ECMA-262::25.2 SharedArrayBuffer Objects