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単価記号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アットマークから転送)
@

単価記号(たんかきごう)とは記号「@」。 JIS X 0208 における日本語通用名称「単価記号」に[1]後に制定された JIS X 0213 においてアットマークと言う別称が加えられた[2]。「a」を丸で囲んだ」とは別字。

@」は会計において一般に用いられる略記号。例えば「商品7個 @ $2 = $14」(商品7個 各単価2ドル 小計14ドル)のように請求書などに用いられていた。レイ・トムリンソン電子メールメールアドレスに用いたので1990年代後半以降に身近な記号になっていった。

名称

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ANSICCITTUnicode による文字コード規格では、いずれも「commercial at」(コマーシャルアット)が公式名称である。Unicode はさらに「at sign」を代替名称としている[3]英語では一般に「at @」あるいは「at symbol」などと呼ばれ、文章中では単に「at」と読まれる。

各言語で、以下のような俗称がある[要出典]。(言語によっては正式名称として扱われている[注釈 1][4])

言語俗称意味
スペインの旗スペイン語arroba[注釈 2]アローバ
ポルトガルの旗ポルトガル語
フランスの旗フランス語arobase
イタリアの旗イタリア語chiocciola, chiocciolinaカタツムリ
ウクライナの旗ウクライナ語равлик
エスペラントの旗エスペラントheliko
ベラルーシの旗ベラルーシ語слімак
オランダの旗オランダ語apenstaartjeの小さな尻尾[4]
ギリシャの旗ギリシア語παπάκι小さなアヒル
スウェーデンの旗スウェーデン語snabel-aの鼻のa
デンマークの旗デンマーク語
ノルウェーの旗ノルウェー語krøllalfaカールしたα(アルファ)
フィンランドの旗フィンランド語kissanhäntäの尾
スロベニアの旗スロベニア語afna
チェコスロバキアの旗チェコ語zavináčロールモップス(巻きニシン
スロバキアの旗スロバキア語
トルコの旗トルコ語kuyruklu a尾のa
ルーマニアの旗ルーマニア語a rond丸囲みのa
中華人民共和国の旗中国語中国大陸艾特(アイ・テ)「at」の音声転写
圈a丸a
花a花体のa
中華民国の旗中国語台湾小老鼠小さな
大韓民国の旗韓国語골뱅이巻貝
ドイツの旗ドイツ語Klammeraffeクモザル
日本の旗日本語アットマーク
ハンガリーの旗ハンガリー語kukac蠕虫
ブルガリアの旗ブルガリア語маймунка小さな猿
イスラエルの旗ヘブライ語שטרודלシュトゥルーデル
ポーランドの旗ポーランド語małpa
ロシアの旗ロシア語собака, собачка
ベトナムの旗ベトナム語a còng湾曲したa
a móc鈎付きのa

起源

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1448年の文書でアローバの記号として使われた @
1674年のフランス語文書で à として使われた @
à 説に基づく @ の起源

起源にはいくつかの説がある。

歴史

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最古の登場は、12世紀のビサンツ帝国の年譜記録者コンスタンティノス・マナセルによる、ある写本の1345年のブルガリア語訳だった(当の写本は今はバチカン図書館にある)。そこでは「アーメン」という単語の「A」の字の代わりに@が登場する[4]

1448年のスペイン語の文章、1536年のイタリア語の文章、1674年のフランス語の文章に@の印が見つかっている[4]

意味

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単価

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たとえば @$300 と書いて、単価(1個の価格)が300ドルであることを意味する。ただし英単語の at の意味は「単価」ではなく「~の値段で」で、単価300ドルは正確には at $300 apiece などという。

スタイルシート言語

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CSS(Cascading Style Sheets)では、@規則で使う(@charset "UTF-8";

,@media all {p {color: red}}

)など。


メールアドレス

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現在では、atの代わりに幅広く使われだしており、特に、インターネット電子メールアドレスで、ユーザ名とドメイン名を分けるのに使われる。これは、1971年、レイ・トムリンソンが、前述のように単価を表す文字として使われていた@を「このユーザーは、ローカルマシン上(at the local machine)ではなく、他のホスト上(at another host)に居る」と言う意味を込めるために採用したことに始まる[6][4]

プログラム言語

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  • Pythonにおいて@は宣言したデコレータを呼び出す際に用いる。
  • Rubyにおいて@はインスタンス変数の識別子を表し、@hogeでインスタンス間での変数のやりとりが可能となる。
  • Perlにおいて@は配列変数を宣言する。
  • PHPにおいて@はエラー制御演算子を表し、@func(funcは予約関数)で、一定のエラー表示を抑制することができる。
  • Vue.jsにおいて@はv-onディレクティブの省略記法となっている。v-on:clickの場合は@clickと記述することができる。

自然言語

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  • 英単語の at の略記に使う。
  • メールアドレスでの用法から派生し、自然言語でも、電子メール中などで「人名@企業・団体名」というような使い方をすることがある。
    • 日本語ではその派生としてオンラインゲームアーケードゲーム等にて「ニックネーム@所属チーム名」・「ニックネーム@使用キャラクター(アバター)の名前」といった使い方もみられる。
  • 特にアメリカでは、スポーツ競技のホームアンドアウェイでの対戦カードを「アウェイチーム@ホームチーム」で表記することが多い。これは、アウェイチームから見て「相手チームのホームで (at) 試合をする」という意味がある。
  • Leet (ハッカー語)では「a」や「at」の代わりに使うことがある。例:THE IDOLM@STER(この場合はTHE IDOLMASTERと発音する)。
  • コンピューターゲームの『ローグ』において主人公を示す記号に@が使われた事から、ローグライクゲームにおける自機の総称、通称として@を用いることがある。
  • 日本語では英語 at にかけたインターネットスラングとして、いくつかの用法がある。
    • 英語のatの意味から派生して、場所を表す表現に用いる。例えば、「今日は暑かった@渋谷」で渋谷周辺に言及していることを表す。
    • 音の「あと」をとって追加事項を表す。例えば、「@3日」は「あと3日」、「@3人」は「あと3人」。
    • さらに派生して「あと」の意味を伴わない追加事項を表す場合にも使われる。例えば、「イベント@終了」でイベントが終了したことを表すなど。
  • 日本のプロゴルフツアーにアマチュア選手が参加した際、リーダーボード(順位表)の氏名にはアットマークが前置される[7][8]
  • スペイン語ポルトガル語などでは、名詞母音が男性形なら -o- ・女性形なら -a- となるとき通性形として -@- を使う。たとえば、amig@sは「amigos(男の友達)またはamigas(女の友達)」を意味する。
  • @の大文字と小文字
    コアリブ語 (Koalib language) の正書法では、ラテン文字の1つとしてアラビア語からの借用語に使われる。@大文字も使う[9]。文字としての@の大文字・小文字は、国際SILによりUnicodeの私用領域に外字として登録されたが[10]、Unicodeには採用されていない。
  • インターネットリレーチャット(IRC)では、チャンネルのオペレーター権限を持っていることを示すために、ニックネームの前につけられる。日本では、鳴門巻きの輪切りに似ていることから「なると」とも呼ばれる。
  • ビッグモーターにおいて、車両修理の工賃と部品交換で得られる利益の合計額を表す隠語、@「アット」[11]ビッグモーター#主な不祥事も参照。

記法

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企業・団体名

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  • アットローンはかつて存在した日本の消費者金融。サービス名に「@Loan」の商標を用いていた。
  • エフエム愛知の愛称、@FM(アットエフエム)。
  • ギャラリー@KCUA、京都市立芸術大学のサテライトギャラリー「アクア」と呼ぶ。

文字コード

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Unicode・JIS

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記号UnicodeJIS X 0213文字参照名称
@U+00401-1-87@
@
commercial at
単価記号、アットマーク
U+FE6B-﹫
﹫
small commercial at
U+FF201-1-87@
@
fullwidth commercial at

モールス符号

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国際電気通信連合2004年5月3日、国際モールス符号[12]@を追加することを承認した。符号は・--・-・[注釈 3]

脚注

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注釈

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  1. ^具体的にはスペイン語・ポルトガル語である。
  2. ^arroba メートル法以前の質量あるいは体積の単位として用いられる(この言葉の由来をさらにたどると、アラビア語でロバが背負える荷物の量を指す言葉に行き着く)。
  3. ^なお#起源に出てくるフランス語の前置詞 à (À) には、この符号表には載っていないものの・--・-が使われている(モールス符号#主な“ダイアクリティカルマーク”付きアルファベットなど)。

出典

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関連項目

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参考文献

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  • 日本工業規格『JIS X 0208:1997 - 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合』日本規格協会、1997年。 
  • 日本工業規格『JIS X 0213:2000 - 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合』日本規格協会、2000年。 
  • The Unicode Consortium (2014年). “C0 Controls and Basic Latin” (PDF). The Unicode Standard, Version 7.0. Mountain View, CA: The Unicode Consortium. 2014年9月7日閲覧。
  • スティーブン・ウェップ著、松浦俊輔訳『記号とシンボルの事典』青土社、2019年、27頁 arroba,arobase,apenstaartje,kukac,snabel-aの表記確認
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